Re: 七紋の英雄〜王国の返還〜 ( No.7 )
日時: 2009/07/25 18:07
名前: 隆起 ◆X04L3X1mws (ID: NRtozrcf)

【プロローグ1】

 ――昔、世界には七つの国と七つの種族と七つの魔力が存在していた。
 
 王の国『イズマーレ』、樹の国『ムスタファー』、エルフの国『キュール』、ドワーフの国『ガガンジャ』、炎の国『ヌスガンデ』、水の国『ハイゼン』、旧王国『ガルドック』の七つの国が膨大な魔力に包まれたリーガル大陸を支配していた。

 王の国『イズマーレ』は七百年に渡り全世界の首都である『フィスリカッタ』を支配する国であり、その国民の殆んどは人間である。初代王であるハイド・カスレードがリーガル大陸を手中に収める為、七つ国の中で王座を得る為に、自分の子孫が王座を継承し続ける限り魂を霊魂に変え、天には昇らせないと魔法で契約したから、『イズマーレ』は七百年の間王座についていると言われている。『イズマーレ』の国民に人間しか居ないのは、初代国王が魔法契約を交わした悪魔が他の種族を苦手にしていたからだと言う……。

 樹の国『ムスタファー』、この国は七つ国の中で唯一太古の時代、人間やエルフやドワーフが現れる前の時代から存在すると言われる国である。国と言う形は無く、ヴァルハラ高原を抜けた先に天にも昇るような大樹が聳える地帯を人々は、樹の国『ムスタファー』と呼ぶ。そこには強力な魔力を持ったエルフも近づかず、入った者は気高き獣達に血肉を食われると言い伝えられている。

 エルフの国『キュール』にはエルフしか住んでいない。聖林と呼ばれる林の木々の上に家を作り、住んでいる。エルフは他のどの種族よりも優れており、その卓越した魔力や身体能力は人間やドワーフの非では無い。『キュール』には初代国王とその部下七人が掛けた強大な防壁魔法で常に護られている。その魔法を破る事は出来ないと言われているが、言い伝えによるとエルフの国の女王が誕生した時、その女王が涙を流すと防壁魔法は破られると言う。

 ドワーフの国『ガガンジャ』、地下を好むドワーフ達によって作られた七つ国最大の国である。国の入り口を見つけるのは簡単で、入る事も容易に過ぎない。しかし、国の中に入り込むには地下の大迷宮を通らなければならない。大迷宮は幾つもの道があるが、国の内部に繋がる道は一つ。その道を見つけるのは微かに流れる空気を嗅ぐ事が出来るドワーフ族だけである。魔力がその血に流れていない人間は到底見つけ出す事は出来なければ、エルフでも魔力の低い者は見つけられない。

 火の国『ヌスガンデ』と水の国『ハイゼン』は火と水で作られた国である。“神々の懺悔”と呼ばれる七日間、その七日間は天が赤く染まった日々であり、この世界に魔法と言う不思議な力がこの地に舞い降りた時もである。その七日間に赤い稲妻が二つの地に落ちたと言う。その際に出来た国が『ヌスガンデ』と『ハイゼン』だと人々の間では言われている。

 旧王国『ガルドック』……この国に語られる事は数多く、全てが嘘か真実かは定かでは無い。一つ分かる事は『イズマーレ』が主権を握る以前、この『ガルドック』が世界を支配していたと言う事だけである。しかし、それも七百年も前の話。現在では人など住んでおらず、住んでおるのは追放されたユギトと呼ばれる異形種だけ……。広大に広がる灰色の空、その灰色の空の配下には腐った血肉の臭いが広がり、その空気を吸うだけで普通の人間やエルフやドワーフは肺を腐らせると言う。目の前に広がるのは廃墟、廃墟、廃墟の連続である。